2013年1月30日水曜日

幸せ探しの旅




動かなくなった鉄の塊を相手に、
街が起き始めるまで冷たい車の中で待つことを、
ここ数日の間に2度も繰り返す。

以前だったら、
どうしたら会社に遅れずにたどり着けるか、
如何に時間を有効利用するか、
など賢明に考えたものだが、
今回は、そんな気にもならずに、
そんな自分を悲しく見つめる。

二回目は、流石に溜息が漏れ、
整備会社を罵る思いが膨らむ。
が、
親切、フレンドリーであること、と、サービスの質は比例しないし、
安いのは、安いなりの理由があるものだと、
変に納得する。

7時を過ぎても、
一向に街は起きないし、
夜の暗闇をまとった空の下、
通る車もない。

流石に子供のいる家庭は起きているだろうと、
2人目の近所の知り合いに電話をするが、
やはり、どうやら起こしてしまったらしい。
パジャマ姿だからと言う相手に大いに恐縮し、
ちょっと遠くはなるが、起こしても気にならない友人に電話をする。
案の定、寝起きの声がする。
30分は待ってちょうだい、との返事に、大きく頷く。

そうなのか。
7時は、未だベッドでぬくもりを楽しんでいる時間帯なのか。
もうすぐ、そんな時間が私にも訪れることになるのか。

と、先ほどのパジャマ姿と言っていた近所の知り合いから電話。
未だ助っ人が来ていないなら一っ走り寄るわよ、と心配して声を掛けてくれる。
3軒隣でもあり、ありがたくお願いする。

トヨタの新車がぬっと暗闇から現れる。
高校生のお姉ちゃんが昨晩、急性胃腸炎で吐き、
本人も小指の爪が剥がれたとかで、包帯をぐるぐる巻きにしている。
そして、会社から一日お休みをとったという。
そういう彼女に、申し訳なさで一杯になる。

バッテリーをつなげ、エンジンをかけると、
いつもの軽やかな音がして、エンジンがかかる。

鉄の塊が、自動車に変身する瞬間。

車の故障、なんて、些細なことなのであろう。
が、動かなくなった鉄の塊を前に、
本気で人生を止めたくなる。

それでも、
なんとか、かんとか修理し、動き出すと、
ああ、人生も同じかな、と。
辛いことがあっても、いつかは解決策が出てくるものなのかな、と。

人間は、いつの世も幸せ探しの旅を続けているのであろう。

山の彼方の空遠く、幸い住むと人の言う、
ああ、我、人と とめゆきて 涙さしぐみ帰り来ぬ
山の彼方に なお遠く、幸い住むと人の言う。

カールブッセ




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