あれは小学の頃か、
いや、もう中学になっていた頃か。
お客様がいらっしゃったと連絡を受けると、
ご挨拶に行ってくると、
母は着物姿で会社に出て行くことが多かった。
それが仕事でもあった。
戻ってきた母の後ろを追って、
母が着物を着替える様子を見ながら、
話を聞くことが好きだった、あの頃。
お客様の接待なんて、若い頃には考えられなかったけど、
今では皆さん、サービス業にとっても向いているって仰るのよね。
ハイトーンの笑いの混じった母の話は続く。
子供の頃から、自慢の母。
授業参観になると、友達からいつだって羨ましがられる。
若くて、美人で、かっこよくって、いいね、と。
デパートで買い物をしている時にだって、
お店のお姉さん達から、ママなの?若くて美人ね、と言われていた。
友達から、どうしてお母さんに似なかったの?と、
意地悪でもなく、嫌味でもなく、
本当に残念がっている口調で言われることにも慣れていて、
私自身、本当に残念に思っていた。
そんな母から、
リップサービスならぬ言葉を聞いた時には、
正直ぎょっとした。
お客様へのリップサービス。
え、まさか、お母さん。
え、そんなこと、しているんだ。
それが、当たり前のように、なんでもないことのように、
お客様だもの、喜ばれるものね、
といった感じで説明されると、
なんとなく、呆然としたもの。
そうしたら、
あら?いやねぇ。何よ、その顔。
何を想像しているの?
リップサービスって、ちょっと、ちょっと。
と、すっかり考えていることを言い当てられ、
実は、すごい勘違いであったことが瞬時に分かり、
大いに恥じ入ったもの。
そのリップサービスならぬ、筆サービスを
忘れていた頃に、
ぽーん、と送ってくれる貴重な友人がいる。
本気にしたら、
お互い、ちょっと困るであろう間柄。
十分、そのことを分かっているから、
そして、相手を信頼しているからこそ、
ちょっとだけ、垣根を越えるような素振りを見せる。
あと一押しで、本気にしようかと思うところで、
相手の動きは、ぴったりと止まってしまう。
今回は偶然にも、私と同じ名前の女性について、
彼から問い合わせが入る。
てきぱき返事をし、彼女のことは、便宜上、いや、ちょととした、からかいの意味も込めて、貴方の○○さん、といった言い方をする。
すると、
すぐに返事が返ってくる。
親愛なる○○
僕にとって唯一の○○は君だよ。
優しいキス
と、同時に別件のメールには、
何かにつけ過剰に反応してしまう時期ってものがあるもんだよ。チャンスがどうも味方をしてくれていないように思われるんだ。どんなちっぽけなことも、辛く思われるんだよ。
でも、そんな時期は過ぎてしまう。トンネルの向こうには、いつだって明るい光があるんだ。友達だっている。
結局のところ、友情や愛といったものが、何にも増して大切なんだ。
頑張ってね、僕の○○。
必要な時には、いつだって僕は両手を広げているよ。
キス
リップサービズならぬ筆サービス
いや、
ちょっとだけ、今夜だけ、好きに解釈してしまおうか。

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