2013年2月14日木曜日

深紅の薔薇



ぼんやりと空を見上げると、
ふっくらとした三日月が枝に引っかかって見える。

にやにやと、
からかわれている様な気分になる。

待ち合わせ場所が変わるのは、いつものこと。
車の混み具合によって、時間が全く分からないからか、
出発地点さえ知らされないことが多い。

そうして、待ちぼうけを喰った事も少なくない。

今回も、オフィスを出ようとしたところで、
珍しく上司に声を掛けられる。
変に、にこにこしていて、
でも、話している内容は、ちっとも面白くもない。
最近は感情を出さずに、
にっこりと受け流すことにしている。
保身の態度を見るのは、面白くないし、
かといって、
分からなくもないしで、
そんなことに気を遣っている自分を
馬鹿馬鹿しいとさえ思う。

慌てて駐車場に駆け込み、
一体、待ち合わせ場所に、何時に着く予定なのか、
期待しないでSMSで聞いてみる。

案の定、返事なし。
そりゃあ、向こうだって、ハンドルを握っている。
そう、易々と携帯チェックなどできないであろう。
しかも、警察に見つかれば、罰金に加えて減点2点。

そうなると、有料高速を使って、目的地に急いだ方が安心か。
どうやら、最近、クレジットカードのチップに問題があって、
駐車場や高速の料金支払いの時に、読み込んでくれない。
十分キャッシュがあることを確認し、
高速に進む。

こういう時に限って、
交通渋滞でにっちもさっちもいかないよ、との連絡が入る。
が、今回は、どうもそうではないらしい。
後、30分には着く予定とのメッセージ。

慌てて飛ばして、フラッシュを焚かれてもつまらない。
逸る心を抑えつつ、慎重に運転。
そうして、漸く、目指す出口に近づく手前で、携帯が震える。

慌てた早口で何やら伝える声が聞こえてくる。
ええっ?
道路が混んでいるので、別ルートを取ったぁ?
それで、待ち合わせ場所の変更?
オ、オッケー。

こんな時、高速に乗って、もうすぐ到着する、なんて決して言わない。
そうして、出口で下りて、ユーターン。
上手い具合に、こちら側は混んでいない。
しかし、高速を使っていなかったら、
それこそ、通常の通り道。
勿論、だからこそ、の場所の変更なのだろう。

何となく、損した気がしなくもなく、
かつ、
遅れちゃ困るとばかりに、
エンジンを加速。

と、
パシャン!

路上に止めてある普通車からのフラッシュ。
ええっ?
私?

隣も急に速度を落とす。
いや、もう遅いって。
彼?私?それとも、前の彼女?

やられちゃったかな。

そうしながら、到着。
一番乗り。

止めた車のフロントグラスから覗いた空に
月がにたにたと見下ろしていた、
という状況。

そう待たずに、車が止まる。
助手席から、
ほんのりと甘い香りを発している包みを手に取る。

無造作に鞄に放って、
進み出ると、
濃ブルーのダッフルコートが目に付く。

新調したのかな。
知らない、知りえない時空が一瞬にして頭を過ぎり、
気が遠くなる思いをもてあます。

「暖かそうね」
漸く声になる。

と、
深紅の薔薇の花束。
ハッピーバレンタイン!
にっこりと笑顔に迎えられる。


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