2014年9月6日土曜日

切り絵のような半月



照明を落とした大きな会場を人ごみを縫って進み、
知った顔を見つけて嬉しそうに挨拶を交わす人々を横目で確かめ、
途中で逸れてしまった一緒に入った仲間の姿を遠くに見つけ、
そうこうしながらも人ごみに押され揉まれ、BGMの和太鼓の生演奏が響く中、
なんとか、それらしき会場の中心に入り込む。

あまりの人ごみで、そこが別空間として他を圧倒しているようには見受けられず、
汗を流しふーふーしている隣の背広の紳士と二言三言、言葉を交わす。
どうやら、その会場の企画運営に携わった功労者のようで、
熱狂する人々から距離をとって眺めていたらしく、ぼんやりとしていた傍観者の我が身とは全く立場が違うながら、出会いの妙。

その業界のスターがいるらしく、彼を取り巻いて幾つもの輪ができている。
取り敢えずは数名と名刺を交換し、カプチーノのクリームの上澄みのような会話を交わし、仲間の一人に促されて、会場の奥に進む。
二階に上がるエスカレーターは白煙で謎めいている。

ふと携帯をのぞくと、数件の電話メッセージ、SMSが入っている。
発信源を確かめる間もなく、大慌てで仲間を探し、一人に急用ができて出なければならない旨伝える。こちらの慌てようが伝わったのか、人混みの中で帰り道を一緒に探してくれる。

それからは、階段を駆け下り、まっしぐらに出口に向かう。先程の喧騒が嘘のように入り口は閑散としていて、警備員だけが手持ぶたさにしている。数名の招待客が連れが来ないのか、携帯をひっきりなしに耳に当てている。その中を駆け抜け表に出る。

タクシーか。
通りはびっしりとタクシーで埋め尽くされているが、赤ランプ。つまり予約済み。恐らく会場の客が帰りの足を既に確保しているということだろう。となると、メトロか。

息せき切って電話をし、遅れてしまうことを詫びる。
祈るような思いでメトロがゆらゆらと走る中、少しでも早く駐車場に着くよう目を閉じる。会場に残した仲間数人に挨拶もせずに出てしまったことを詫びるSMSを送る。
こんなことなら、会場近くの駐車場に朝から入れていれば良かったのに、と悔やまれる。焦っても電車の走行速度は変わるまい。それでも焦らずにはいられない。

こんな時に限って、地下四階に駐車しており、エレベーターへの警備は厳しく、何重もの扉をカードで開け続ける。

それでもやっと外に出て暗闇迫る車道を走り出す。
空には貼り絵のような黄色い半月がぺっとり張り付いている。

絡まる脚で飛び込むようにドアを開けて入ると、窓際にひっそりと姿が見える。
間に合った。背筋を伸ばしてテーブルに向かう。




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