2015年10月10日土曜日

宵のエトワール






急いでいる時に限って障害が同時発生してしまう。


金曜の夜はバッタ達をモールの森までヴァイオリンのレッスンに連れて行く日なのに、どうしても早く切り上げることが出来ない。
それでも、「ごめんなさいっ!中途半端なこと分かっています。でも、もう行かないと。」と、慌ててPCをオフにして、オフィスを後にする。
どれだけ勇気がいることか。


走ってメトロに乗り込み、RERのプラットフォームまで駆けつけて唖然とする。
どうもいつもと様子が違う。
金曜の夜の6時半の喧騒とはまた違い、騒然としている。
皆が時刻表パネルを見上げ、溜息をつき、電話を掛けている。
どうやら、途中の駅で火災発生。復旧は明日朝。


こうなったら行ける場所まで電車で行って、その後タクシーに乗ろう。
タクシー乗り場まで這う這うの体でたどり着いてから、そんな考えを持った人間は自分一人ではないことに漸く気が付く。果てしない列。まさか、この人たち皆がタクシーを待っているのだろうか。一人に声を掛けると、そうなんだよ、と返事が返ってくる。すぐに同じ場所に行こうとしていることが分かり、では相乗りを、となるが、そんなことをしても、いや、たとえ全員が相乗りをしてくれたとしても、この列を捌くだけのタクシーは、そう簡単に来てくれそうにない。現に、今も一台のタクシーがやってきて、オルリー空港に行くと言う一人を乗せて走り去ったばかり。その後、車一台走ってこない。


電話を掛けてみる。ひょっとしたら、と。
驚いたことに、相手が出る。事情を話すと笑い声が聞こえる。どうやら車でパリの中心にいるらしい。それならば、どこかで拾ってもらえまいか。
エトワールでなら拾えるという。30分後に。
エトワール。後戻りとなってしまう。しかも、30分後か。

長蛇の列と車一台通らない道をもう一度確認する。乗せていってもらおう。
同じ不運な環境下にあるという連帯感が皆を饒舌にさせており、仲間意識が芽生え始めていた。親しい仲間に別れを告げるように挨拶をし、その場を離れ、来た道を戻る。

混雑しているだろうRERは避け、メトロでのんびりエトワールまで出る。


エトワール。凱旋門を中心に放射線状に12もの大通りが走っている様が、まるで星のようだと名付けられた場所。


階段を駆け上がり、外に出る。


どうしてもレッスンに間に合わないと、と逸っていた気持ちが消え、自分の不運に舌打ちしたくなる気持ちもすっかりなくなる。

今は、この時を楽しもうか。
延々と続く赤いテールランプの流れ。
いつになるか分からないピックアップを待ちつつ、濃さを増していく群青の空を仰ぐ。






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