2018年3月17日土曜日

常緑樹の緑の風



ねえ、お客さん、仕事だったの?こんなに遅いってことは、弁護士?あ、違うんだ。じゃあ、バンカー?へーえ、それも違うのか。彼ら程は稼いでいないって?いや、ああいった人たちだって、そう稼いじゃいないさ。そんなもんだって。疲れているって言うけど、俺だって休みなしで仕事だよ。でも5月にゃバカンスに行くよ。どこってアルジェリアさ!そうさ、アルジェリアは素晴らしい国だよ。お客さん、アルジェリアの料理しか知らないって?俺は、あと5年もしたらアルジェリアに帰って、ヴィラを造るよ。そして旅行者を泊めるんだ。そう、プール付きのね。家族はみんなあっちにいるよ。へえ、お客さん、日本人なのか。子供3人いるって?大したもんだ。なんだって?子供たちは、それぞれ出て行ってしまっているのかい。日本人ってのは家族第一なんだろう?子供たちは両親を尊敬し、成人になるまでは家にいるし、結婚しても常に親に会いに来るんだろう?ああ、子供たちはフランスで育っているから、フランス式なのか。っていうか、お客さん、何歳なの?なあんだ、未だベベじゃないか。はっはっは!こりゃあいい。べべが3人のべべを産んだってさ!

お客さん、日本には帰らないのかい。日本人の旦那を見つければいいだろう。すぐに相手は見つかるさ。日本人は良い国民なんだろう。日本はいい国なんだろう。でもさ、そしたら、どうだい。アルジェリアに来ないか。俺の家はアルジェにあるんだ。そうさ、空港からすぐに行ける場所だよ。アルジェリアの中心さ。アルジェリアの人はいいぞ。心優しく、なんといっても家族を大切にするよ。そう、日本人のようにね。で、アルジェリアじゃ、日本人はとっても尊敬されているんだ。お客さん、人気者だよ。俺たち、日本人のスポーツ精神に憧れているんだよ。皆柔道をしているよ。え?お客さん、スポーツしないのか。なになに?でも魂は持っているって?はっはっは!そりゃあいい。柔道家の魂を持っているんなら大歓迎だよ。問題ないさ。いい男がいるよ、国には。言葉?俺たち、9割はフランス語をしゃべるよ。問題ないだろう?おいでよ、アルジェリアに。

アルジェリアで知っていることは料理だけじゃない。セメント工場建設に力を注いだ大先輩を思い出す。大先輩の目から見た紺碧の乾いた空を想う。

真夜中の市街を走るタクシーの小さな空間で、エンジン音だけが静かに響き、動かない紺碧の空にオレンジ、ナツメヤシ、カシ、ユーカリ、オリーブといった常緑樹の緑の風が駆け抜けていった。





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