ホテルからRiffelalpの駅までカラマツの林を歩き、9時3分発のゴルナグラート行きの登山電車に乗る。
スイスの登山電車は驚くべきことに、どんな無人駅だろうが、電光掲示板がついていて、何時にどこ行きが通過するのか、分かるようになっている。そして、その時間になると、にぎやかな構内放送など一切なく、なんの前触れもなく静かに電車が滑り込む。更に、特筆すべきこととして、線路と道路の高さが同水準なのである。プラットフォームというのは、周辺よりも高くなった水平で平らな場所(台地)を指す言葉なので、スイスの駅は厳密にはプラットフォームがない。そして、何よりも、景観が素晴らしい。
そして、マッターホルンが気高く、誇らしげに立ちはだかっている。
なんという快晴だろう。あの雨模様の天気予報はなんだったのだろうか。今回も父が便宜を図ってくれたのだろうか。
氷河が押し迫って見え始める。
あまりの雲一つない快晴に、青空にくっきりと聳え立つマッターホルンに、涙がこみあげてきてしまう。
ゴルナグラートからローテンボーデンを通り、リッフェルベルクまで歩いて降りることにする。
こんなに素晴らしい景観を母と二人だけで味わっていること自体が信じられない。我々、二人以外に、周りには誰もいないのだから。
この空の青さといったらどうだろう。空気が透明だからか。
逆さマッターホルンで有名なリッフェル湖が遠くに見えてきた。遠めからも観光客でにぎわっていることが見える。どうも風があるらしく、湖面にはくっきりとした姿が映ってくれていない。
プロの写真家なら、じっと時を待つに違いない。しかし、真っ赤な帽子の母の姿はずんずんと先を行く。後ろ髪を引かれながらも、母の後を追うしかあるまい。
湖をぐるりとしたところで、どうやら風がやみ、湖水がぴたりと静まり、美しく周囲の景色を映していることに気がつく。思い切って、戻ろうかと思うが、これも出会いなのだろうな、と思う。一瞬の出会い。まあ、マッターホルンが映ってはいないが、雪を抱いた山脈の景観も壮大ではあった。
と、どうしたことだろう。別の湖が見えてくるではないか!
風が凪いでくれない。焦るが、今回はじっと待つ。
そう、そろそろ凪いでおくれ。
なんてことだろう。心が震えてしまい、どうしようもない。
ああ、最高じゃあないか!どうだろう。この壮大さは!
写真を撮っても、撮っても、次々に心震える景観が迫ってくる。
リッフェルベルクでゴンドラに乗り、今度はマッターホルン・グレッシャー・パラダイスを目指す。ホテルのフロントの女性のお薦めだった。晴れている時にできるだけ移動するようにと。

にほんブログ村
↑ クリックして応援していただけると嬉しいです
皆さんからのコメント楽しみにしています