牡丹の甘苦しい香りにため息をつき、
動かない携帯の画面を見つめる。
メッセージ着信を知らせる機能が作動しなくなって、
もう一年になるか。
大人の自分でさえ、
持て余しているのに
子供たちはどう自己管理をするのだろう。
いや、自己管理など所詮大人も子供も似たり寄ったりであろう。
ある日突然太陽が東の空から昇らなくなった時のように、
何の音沙汰もなく、
沈黙が続き、
沈黙こそが全てを物語っているとさえ思え始め、
心がざわざわと波立ち、
絶望的な思いに追いやられる。
と、
何事もなかったかのように、
メッセージが舞い込む。
そうか。
曇り空の日は、日の出は拝めないのか。
当たり前のことに今更ながら気付かされる。
それなら、と、
大気圏を突破してみると、
そこは宇宙空間。
空気もなく、気圧もなく、
ましてや気温など存在しない。
雨の日に太陽が拝めなくてもいいじゃないか。
雨の滴に太陽の香りが満ちている。
曇り空に太陽が拝めなくてもいいじゃないか。
大気に太陽の温かさが満ちている。
メッセージが届かなくてもいいじゃないか。
あちこちに痛い程存在が感じられる。
そっと目を閉じる。

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