2013年7月17日水曜日

ある夏の日




暫く前から誘われていて、
アジェンダにしっかりと印をつけていたものの、
当日になってみても詳細ちっとも連絡なく、
このまま夕方まで音沙汰なかったらと思うと、
まさかとは思うも、
胸が押しつぶされそうになる。

その時は、その時、と
今しなければならないこと、
いや、厳密に言えば、
今しなければならないと思っていることを
淡々とこなす。

と、いつの間にかメールが入っている。
先日、私が送ったメールに返信する格好で、
メッセージなしの添付資料のみの送信。
PDFをクリックすると住所と地図が踊りでる。

それからは、
猛スピードで全てのことに取りかかり、
慌ててパールのマニキュアをし、
片付けたアイロンを引っ張り出して、
洗い立ての真っ白なコットンにあて、
二時間近くの運転で皺くちゃになるだろうからと、
丁寧にたたみ、ふんわりとネットに入れて鞄にしまう。

夕方、本を返しに来てくれるという友人には、
明日のお茶に招待し、
ちょっと迷ってベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のCDを鞄に放り込み、
さて、出発、
と、二件のメッセージ。

一つは先程の友人。
明日はプールに遊びに行くので、また別の機会に、とのこと。

もう一つは200km先の友人。
1時間前に送った、待ち合わせの時間を確認する私のSMSに対する返事。
どうやら、いや、やっぱり、期待した時間の1時間後を待ち合わせの時間として告げている。

ふむ。
随分前にトスカーナで買ったヒールを脱ぐ。
友人一家を訪れた夏の週末。
あの時のかっきりとして動かない青い空がよみがえる。
偶然にして、いや、必然たる偶然によって同じ村を訪れ、
お互いの足跡を探し求めた、あの日。

こんな時こそ、書類整理がはかどる。
山の書類を一つ一つ崩していく。
非常に機械的に、かつ見落とさずに。

玄関脇の衣装棚前の山が片付くと、
ハンガーラックに忘れられたかのように取り残された、
数週間前までは手放せなかったオーバーやコートを
衣装棚に仕舞う。
一緒に手袋、マフラー、厚手の靴下、毛糸の帽子なども袋に詰めて仕舞いこむ。

すっかりシャッターを閉めた屋内は
ひんやりとして心地よい。
掃除機をかけたばかりのフローリングは
裸足に気持ちいい。

キッチンにある我が家で唯一正確な時を刻むオーブンの時計を見て、
慌てて外に出る。
暑い日差しが焦燥感にも似た熱い思いに転換していく。

これから共有する時を思い、
これから出会う場所を思う。
思わぬ渋滞に、
クラッチに足を、ギアに手を載せながら、
何てついているんだろうと笑みが漏れる。
前方に、信号も障害物(走行車)もなければ、
優に時速200kmは出してしまっていようか。

永遠に続くかと思われた車の波も
いつの間にか途絶え、
集落を過ぎるたびに、
走行車の数は少なくなっている。

思わぬタイミングで幹線道路から抜け、
スコットランドかと思わせる田園風景が広がり、
羊の群れに遭遇する。
そうして、
今度は森の中を走る。
爽やかな緑の風が車内を吹き抜ける。

空の青にのんびりと
ところどころに浮かぶ雲が色を染め始めるころ
目的地にたどり着く。

そうして、
ようやく大地を踏みしめ、
太陽に向かって大きく駆け出す。



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