2013年12月27日金曜日

立待月



別れがたく、停めてある車までついて行く。
ボンネットが開き、トランクのカバーがするすると引かれると、色鮮やかな黄緑とオレンジのフィンが一式ずつ目に飛び込む。

あ、潜っているんだ。
そういえば、今年こそ何かスポーツを、と言っていたっけ。
仕事ばかりしているわけじゃないってことに、ほっとすれば良いのか、すべてを知らないことに胸を痛めるべきか、新たな発見を喜ぶべきか。
蛍光色が頭を占める。

新しいのを買ったんだよ。
恥ずかしそうな(いや、罰が悪そうな、か)反応がある。
それでも今シーズンに入って三回ほどしか潜れていないらしい。


別れてから、ハンドルを握っている時も、さっきの蛍光色が頭から消えない。
何故、黄緑とオレンジのフィンが二式あるのか。二つとも新品のように思えたし、同じような形に見えたが、どちらかが古くて、どちらかが新たに購入されたものなのか。


世の中、知らなくて良いこともあり、詮索する必要がないこともある。詮索すれば却って疑惑の暗闇に自分から陥ってしまうこともある。分かってはいるが、妄想の世界における奈落への階段は急で、止まろうにも転がり落ちる勢いに任せ、いよいよ落下速度は加速し、茫洋たる暗黒に突入するかの如し。

と、先ほどから、こちらをにたにた笑っている存在に気が付く。
ふと見上げれば立待月。
あんなに月がにたにたしている様は見たことがない。月も笑うのか。
つられてこちらも笑ってしまう。
そうだよね、バカだよね、と笑いながら、ゆっくりと幸せな思いが溢れてくる。


そっとハンドルを握りなおし、アクセルを踏む。







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