2014年10月5日日曜日

冷えたロゼ



気が付くと予定の時間をすっかり過ぎている。何かに熱中すると途中で終えることができない。それでも、今日は本当に終えないと。慌てて形を作ってメール送信。歩きながら送信文を確認し、漏れていた情報に気が付き、書き直して再送。相手にもその旨SMS。

それからどうやって電車を乗り継いだのかは定かではない。記憶は全体像よりも一部の思考のみを捉えて蓄積されるらしい。車の中で月がいつまでも見え続けたことは記憶にある。そう。車を運転するって、自分の空間を味わえ、十分に空や月を楽しめる解放感と充実感がたまらないとひとりごちたことは鮮明に覚えている。

約束の時間をちょっと過ぎて待ち合わせの場所の近くに来るも、駐車場は満杯。夜の9時半なんて、8時過ぎから食事をしている人たちが未だ重い腰を上げずに、すっかりと居座って楽しんでいる半端な時間帯なのだろう。こうなると、どこでもいい。とにかく駐車場が充実しているドライブインでいいのではないかと思ってしまう。

「どこにも駐車スペースがないの。」半ば泣きべそをかいて伝える。どこでもいいから、駐車場のあるところにしようと言ってみる。

「そうだね。それでもいいよ。」

それでもいいよ、という返事は、そうか、それは残念だね、に通じるものがある。どうやら相手も近くまで来ていて、駐車スペースを求めて街中まで入っているらしい。

「分かった。もうちょっと探してみる。」

先程通り過ぎた時に、目的地よりもちょっと前にスペースが一つあったように記憶していた。そこを試してみようか。大きくユータンし、暗く光るセーヌの川面に沿ってすべるように走る。と、携帯が鳴る。

「何しているんだい。こっちは見つかったよ。」

その勝ち誇った声に、カチンとくる。後ろの喧騒から、既にレストランにいるのだろうか。

「分かった。今すぐ行くから。」

そろそろ先程のスペースがある場所まで戻ったろうか。大きくユータンし、徐行。どうやら、一台分のスペースが残っている。駐車には瞬時の判断が鍵。機会を逸してしまうことが多いのは、どうしようと迷っている間にも、車は進むからだろう。これなら始めからここに停めれば良かったのに。後悔と共に、ちゃんと駐車できたことに安心する。さあ、走らないと。

レストランの前では女性が二人紫煙をくゆらせている。しっかりとした木製の扉についている金のノブを押して中に入ると、異空間が待っている。さっと目を走らせる。いない。店の奥まで足を入れるが、どこにも姿はない。

店員が先程の電話予約なら、誰も来ていないと告げる。

慌てて電話をする。
どうやら相手は私の分まで駐車スペースを見つけ、そこで待っていたらしい。それならそうと、最初から言えばいいのに。いや。すぐに電話を切った私がいけなかったのか。兎に角こちらはレストランにいる旨伝えると、すりガラスの向こうに歩いてくる姿が目に入る。

お互いに笑い合って隅の席に陣取る。
それからは会話に夢中になって、次の記憶は口当たりの良いクスクスと旨味たっぷりの野菜スープの味。そして、冷えたロゼ。外には大きな半月。





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