2017年10月22日日曜日

車上荒らし








早朝から出掛ける末娘バッタを車で送ることになり、さて乗るぞ、という段階で彼女が大声を上げる。

「ママっぁ!」

ん?助手席を見てみると、書類やCDが散らばっている。え?床にはサイドボードに入っていた筈の自動車の解説書が出ている。あれれぇ?地図、観光ガイド、住所のメモ、あらゆるものが外に出ている。

車上荒らし!
よくよく考えると、携帯の充電コードがなくなっている。もう古くなって、機能しなくなったトムトムもない。

とにかく、末娘バッタを送らねば。胸の鼓動を抑えつつも、エンジンを駆ける。バックミラーの脇に取り付けてある、高速・駐車サービス利用探知カードは無事。

ドアの鍵が壊されたり、ガラスが割れていたわけでもないので、恐らく、いや、明らかに、車の鍵が掛かっていなかったのだろう。銀行の明細書の通知が、開封されずに残っていた。つまり、所有主が割れてしまったいる。なんだろう、このいやらしさ。誰だか顔が見えない相手に、プライベートな部分を無理やり見られた後味の悪さ。

引っ越してきた最初の夏。朝起きてみると、地下室への扉が開いているので不審に思ってキッチンに入ると、椅子の周りが濡れていたのでぎょっとしたことを思い出す。前夜は雨。まさかの泥棒。寝室においてあったリュックがないことに気が付いた時の恐怖。私が寝ている部屋に侵入したなんて!不幸中の幸いは、バッタ達はパパと海に遊びに行っていて、私一人だったこと。現金と、棚にあった腕時計を盗まれていて、リュックやハンドバック、財布は裏庭に置かれていた。カードもパスポートも無事。

暑い夏で、庭に面したサロンの窓が少し開いていて、そこから侵入したらしい。開いていたから、覗きに入ったのか、或いは、開いていなかったら鍵を壊してでも侵入したのか。

今回の件も、路上にロックしないで駐車しておいた私がいけないのだが、普通は他人の車なのだから、たとえ鍵が開いていても乗らないだろう。

いや、やはりズボラな私が悪いのか。

そういえば、何年か前に、台湾の妹のところにバッタ達が遊びに行った時のこと。妹はバッタ達を連れて、自分の子供の学校のお迎えに車で向かった。通りで仙草ゼリーをおやつに買おうと、ちょっと車を停めて、皆でお店に向かい、戻ったところ、どうも車の様子が違う。あれれ?と、ふと前を見ると、彼女の古い、ちっちゃいミニが停まっているではないか!おおっ。妹は慌ててバッタ達をせかして外に出る。と、本当の所有者が子供達を連れて戻って来た。確か、お互いに大笑いをして別れたのだと思うが、そんなこともあるのだね、とバッタ達から話を聞いてびっくりしたもの。古さも、汚さも、色も、そっくりだったらしい。

その話を思い出して、ふと思う。

ひょっとしたら車上荒らしの相手も、最初はそんなつもりはなかったのかもしれない。よくある車種に、よくある色。自分の車かと思って、入ったところ、違うぞ、と。

いずれにしても、車のロックはどんな時でも掛けよう。家の鍵もしかり。と、ふと動くはずのないカーテンが揺れている。なんと、窓がちょこっとだけ開いている。私か?うーむ。車上荒らしだけで済んで良かったのかもしれない。

皆様も、どうぞお気をつけあれ。





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