2021年3月16日火曜日

よからぬ算段

 




思わず足を止める。

枝に鈴なりについた花穂の先々から、ビロードのような銀の艶艶とした綿毛がのぞいている。


あまりの立派さに茫然と立ちすくむ。


家人はその存在さえも知らないのか、辺りは雑草でうっそうとしている。

一枝だけ失敬しても、罰はあたらないぐらいの大木で、どの枝も見事。


ぱきりというより、しなりとする枝のようで、剪定鋏が必要に思われる。


夜間の外出は禁じられているので、早朝にでも、こっそりと鋏をポケットに忍ばせて、一枝いただきに参上しようか。

未だ日の出ていない暗い道で、花穂の銀色が月明かりに光ってしまうだろうか。




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