2022年7月2日土曜日

鴨になる

 









魔が差した、正にそうとしか言いようがない。これまで、突然の訪問や押し売りに対しては、やんわりとお断りをしていた。どんなに屋根瓦が落ちそうですよ、とか、杉の木が大きくなり過ぎていますよね、とか、タイルを磨きましょうか、とか言われても、「結構です。」或いは「もう別の方に頼んでいます。」と断ってきていた。


それが、どうしたことだろう。午後の2時ごろ、丁度午後の仕事のペースが盛り上がってきている最中に二度もベルが押された。先日、地元の野菜を買わないかと声を掛けられ、いい加減な答えをしたことを申し訳なく思う気持ちがあったのだろうか。屋根瓦が一部吹き飛ばされていて、雨漏りが酷く、フローリングをダメにしたことで、声を掛けてもらった時に対応していれば良かったと後悔の念があったからだろうか。


とにかくも、気か付いたら二人の屈強な男性が、我が家の雨どいの交換作業をし始めていた。ポルトガル訛をわざとか出しつつ、人懐っこい笑顔で、近所で工事をしたばかりで予材があるので、ついでに安く仕上げてあげるよ、と言ってきたのだった。大した額ではない数字を提示するので、そんなものならお任せするか、との気になってしまった。軒樋の一部に小さな穴が数か所あり、そこから雨が降った日にはぽつぽつと水が落ちてくるので、協力接着剤かなにかで、穴を埋めないとなとは思っていたのは事実だった。


トンカが元気に挨拶をしたが、犬は苦手なので、作業時は繋いでおいて欲しいと言われ、家の中に避難させることにした。


案の定、ただ軒樋の取り外しだけでなく、あっちもこっちも取り替えた方がいいよ、と、がんがんと、まるで取り付けてある管を壊すかのようにして、話を進める。しまったな、と思い、値段を聞くと、まあ、最後にまとめるから、とにかく珈琲を淹れてくれないか、と言われてしまう。


珈琲で値段が安くなるものなのか、と思いつつも、そんなことならお安い御用とばかりに、珈琲を淹れ、薔薇の形をしたお砂糖とチョコクッキーをサービスに差し入れをした。


そろそろトンカを散歩に行かせる時間が迫ってきていた。ただ、作業は一通り終わったようだったが、片付けた残っていて、プラスチックや昔の雨どいのペンキの残骸が辺りには散乱していた。なんだか嫌な予感がする。最初に話をつけた男性に、値段のことを聞くと、メジャーを持ってきて、家の周囲と雨どいの長さを一緒に測ろうじゃないか、となった。


と、いうことは、最初の提示の価格は、全体の値段ではなく、1メートルの値段だったのか。真っ青になる。


旦那はどんな仕事をしているのか、と聞いてくる。ここで離婚していると言えば、どんな反応を示すのだろうか。キャッシュで払えるか、と言うので、馬鹿言っちゃ困る、こんな金額キャッシュで置いておく家なんて、今時あるわけがないし、ATMで引き落としができる限度を超えていると告げる。口座振り込みでどうだ、と言えば、来週にはポルトガルにバカンスで帰るので、それではダメだとなる。


一体、私は今まで、何を学んできたのだろうか。先ずは見積もりだろう。それに基づき、合意があって、署名をし、握手をして着手だろう。いやはや。


苦い思いしか残らない。せめて、次の雨降りの日に、雨どいから水が漏れる、なんて悲惨な状況になったり、すぐに錆びてしまうことがなければ良いのだが。自己嫌悪。こんな日に限って、トンカはちっとも言うことを聞かず、せっかく末娘バッタと彼女の友人が作った菜園に入り込みいたずらをしでかし、私の怒りを真っ向から受けてしまう。自分の怒鳴り声に、ますます自己嫌悪。まあ、仕方がない。


魔が差す、ああ、本当に、魔が差したんだわな。


掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 

筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等

諸々の禍事 罪 穢 有らむをば 

祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 

恐み恐みも白す



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