親の背を見て子は育つ、とは本当かもしれない。
両親が接客業だからか、
或いは、もともとの彼らの性格からくるのか、
お客様をお見送りする時は、お車が見えなくなるまで手を振ったり、
お辞儀をする。
友達とて同じこと。
このことはしっかりとDNAで受け継がれているのかもしれない。
我が家にくる方々は、
玄関から庭を通って門を出るまで、
或いは、その姿が通りから見えなくなるまで、
バッタ達や私から見送られることになる。
あと一週間、冬のバカンスが残っているバッタ達。
今週はパパの住むパリ。
このところお役所関連で縁付いているが、
末娘バッタの日本のパスポートがこの夏に期限がくるので、再発行の申請をすることに。
バカンス中でもあるし、パリにいるので、朝のラッシュが収まった頃に彼女をピックアップすることに。
初めの数回こそ、
彼が住むパリのアパートに行くことは勿論、
そこにバッタ達を連れて行くことは、胸が引き裂かれんばかりの至難の業であった。
いや、今でも、大して変わりはない。
約束の10時半ぴったりにアパートの前に車をつける。
予め聞いておいた門のコードを押し、扉を開け中に入る。
と、末娘バッタが飛んでくる。
きっと、窓から、今か、今か、と覗いていたに違いない。
息を弾ませている。
5階から階段を駆け下りたのか。
ちょっと風邪声。
二日しか会っていないのに、久しぶりに会ったように思われる。
いつもは、お姉ちゃんやらお兄ちゃんに助手席を奪われてしまうが、今日は一人。
それでも、遠慮がちに、前に座って良いか、と聞いてくる。
長女バッタからお願いされていた彼女のノートやら、
息子バッタの忘れ物の袋を手渡して、
車を出すと、
アパートの上の窓から、しきりに誰かが手を振っている。
5つになるドミフレール。
幼稚園生の彼は、いつもはベビーシッターさんと一人のところ、
今回はバッタ達がいるので大喜びとか。
長女バッタは英語の講習会に、
息子バッタはバドミントンの練習に朝から出てしまっていたので、
どうやら末娘バッタが、彼のお相手をしていたらしい。
風邪声ながらも、鼻にかかった甘え声で、色々とおしゃべりをしている末娘バッタ。
幸運なことに、大使館の前の路上駐車場が、我々を待っていたかのようにぽっかりと空いており、日本大使館の手際の良さと、お互いの信頼感が感じられる心地よさとを同時に味わいつつ、申請はあっという間に済んでしまう。
先週、フランスのパスポート申請に小一時間かかったこともあり、
これには末娘バッタも驚く。
ね、日本は、日本人としてパスポートを申請する人々を信頼しているから、必要書類も少ないし、こんなに早いのよ。
うれしそうに末娘バッタが頷く。
そうして、ひと時の彼女とのデートの時間はあっけなく終わりに近づく。
快適に車を走らせ、
またもとのアパートの前に車を停める。
手を握って、大きな瞳をぱちぱちとさせ、ふっと顔を寄せてビズをする。
おいおい、まるで恋人同士じゃない。
観念して外に出てからも、
汚いであろう助手席の窓ガラスに口を寄せ、ビズ。
そして、小さな細い手をぴったりとくっつけて、離さない。
これでは、車も出せない。
ふっと手を離した隙に、
車をスッと出し、手を振る。
末娘バッタは、その場から離れない。
ほら、早くアパートに入りなさい。
ほら、
ほら!
そう思いつつ、車をゆっくりと前進させ、バックミラーで末娘バッタの姿がどんどん小さくなっていくのを確認する。
それでも、彼女は動かない。
慌てて窓を開け、左手を大きく上げる。
彼女の手も上がり、やがて見えなくなる。
車は、もう別の道を走り始める。
車は、もう別の道を走り始める。

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皆様からのコメント楽しみにしています。
。。。泣きました。。。
返信削除くっかばらさん、どうぞ安全運転を。
。。。ありがとうございます。。。
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