2013年3月10日日曜日

崩壊寸前の城にて




バカンスだからなのか、
車の波はおだやかで、
いつもより早目に地下駐車場に車を入れる。

バカンスだからなのか、
がらんとした駐車場に、
同僚の車一つ見当たらない。

会社がなくなる時が近づいていることが
否応無く感じられる。

ちょっと前は、今の時間だったら、新聞一部見つからない。
早々と到着する同僚達がコーヒー片手に読み漁っている。
ところが、今では、新聞を配る人影さえ見あたらない。

早朝のミーティングも、
ちょっと前なら、活気溢れ、質問が飛び交い、
発表者も準備に余念がなかった。

ところが、
一人去り、二人去り、
崩壊寸前の会社に忠義を立てる必要はない、と
のんびり出社組が現れ、
今ではおざなりだけのミーティングさえ、
なくなってしまっている。

ワンフロアを使ったオフィスの中央から入ると、
フロアの半分は未だ照明さえ点いていない。

大いにはぐらかされた思いがするも、
崩壊寸前の城とは、こんなものなのだろう。

デスクのPCにログインし、三つの画面を作動させ、
持ってきたラップトップをプラグイン。

と、携帯にSMS着信のサイン。
朝7時。

久しぶりの名前が目に飛び込む。

『ハロー、どうしている?元気だよね、ベイビー、身体に気をつけて、頑張って、昨夜夢を見たよ。』

相変わらず、単語羅列式のメッセージに笑みがこぼれる。
それにしても、夢って。

即返事をする。
『私たちの?』

きっとこれでは、返事は来るまい。

そこで、暫くしてから、
元気なこと、会社の崩壊が秒読み段階であること、未だ次の職場が見つかっていないこと、を簡単に伝えるメッセージを送る。

返事が来る。
『大丈夫だよ。すぐに見つかるさ。間もなく世界で最高に素晴らしいことが僕たちに起こるよ。』

どきん、とする。
彼らしいな、と優しい気持ちで一杯になる。
彼が言うと、僕たちとは、世界中の人々全てにも思えてくる。

その後で、もう一度読み直して、
『us』ではなく、『u』であったことに気がつき、
今度は、彼の優しさが、一抹の淋しさを伴って、心に染み入る。

『間もなく世界で最高に素晴らしいことが君に起こるよ。』

ありがとう。。。




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