寒いと思っていたら、
霙が降り出してきていた。
ワイパーでシャーベットの塊を撥ね飛ばしつつ、
傘は持っているのだろうか、と、ふと思う。
最近、騙し騙し運転していた車を遂に廃車にしたと聞いていた。
運転しながらの携帯利用は罰金と2ポイント。
それでも、
迎えに行こうか、どうしている?
とSMSを書き送る。
取引先に出向いているのか、
或いは、オフィスにいるのか、
仕事がもう終わりそうなのか、
ちっとも分からない。
それでも、
風のある冷たい霙の中を歩く姿が思い浮かぶ。
こんなに早い時間なら、
きっと仕事は終わっておらず、
返事も来ないだろうと思っていたら、
案の定、我が家に帰って夕食の準備をしているキッチンで、
返事が来る。
予想通りの返事。
でも、いつもより、ちょっと優しさが感じられるトーンで。
「ありがとう、大丈夫だよ。」と。
そんなことが、確か数日前。
それから、お昼を誘っても、
ドタキャンされたり、
都合がつかなかったりと、
なかなか会う機会なかったが、
「今、近くに来ているよ。」
と連絡が入る。
慌てて近くの待ち合わせ場所に行って、
「ここにいるよ。」
と連絡。
「なんだ、もう会社を出たの。知らなかったよ。」
と返事が来る。
なんだ。
急いで仕事を終えて出てきたのに、
ちょっとはぐらかされた気分。
なんとなく、疲れが襲う。
聞いて欲しいこと、
話したいこと、
沢山あったはずなのに、
急に萎んでしまう。
暫くして、
にこにこと、嬉しそうにやってくる姿。
いつもなら、
その笑顔に、こちらも反応し、
いや、こちらも最初から笑顔で迎えるのに、
その時は、寒さと疲れが勝ってしまった。
すると、笑顔を引っ込めた相手は
「どう?なんだか、大変そうだね。」
と話しかける。
優しい笑顔に包まれたかったのに、
冷たくなった顔はほころばなかった。
おざなりな話をし始めるが、
それでも、やっぱり、聞いて欲しい話となり、
気がつくと、夢中になって話をしている。
暫くして、
「この間はありがとう。あの日、本当は助けて欲しかったよ。実は30分もバスを待ったなきゃならなかったんだよ。」
すぐには分からなかった。
漸く、あの霙の降った日だと気がつく。
「えっ?電話してくれれば良かったのに。」
でも、もう遅い時間だったんだよ、と。
ゆるやかに時が流れる。
今、どうしても聞いてもらいたかった話を終え、
多くのアドバイスをもらうと、
こうして、大変な時に、応援してもらえて嬉しいこと、
今日は、時間を作ってくれてありがとう、と伝える。
あてにしてくれよ。
いつだって、応援しているんだから。
笑顔が返ってくる。
今度は、温かくなった頬が笑顔にほころぶ。

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