2013年3月22日金曜日

ある晩の書簡のやり取り




落ち着いて、冷静になれよ。
音楽のことを考えるんだ。
シューベルトなんか、どう?
マリアジョアン ピレシュの最新版、聴いていないのか。
彼女、とっても、女性的に弾いているよ。




負のスパイラルから這い出そうともがいているのよ。
だって、聞いてよ。
父親はバッタ達を日曜のコンサートに連れて行かないというの。彼らのコンサートなのによ。
買収会社が日本向けサービスを止めることにしたのに、マネジメントは私に一言もない。
死刑執行日は毎日のように日延べされている。
何の仕事もないのに、毎日出社しなきゃならないの。
某アソシエーションと福島についての不毛なやり取りがあったわ。
応援団でややこしいことになっている。
カクテルについては、とにかく様々な意見が出過ぎてまとまらないの。
チョコレートシフォンケーキを作ろうと思ったら、もう板チョコがなかった。

ポジティブ思考、ね。

だけど、ホワイトチョコで作って、今、部屋中が甘くて美味しそうな香りで満たされてきている。
カクテルの企画メンバーは皆明るくて、大成功になること間違いなし。
応援団は立派なパフォーマンスを見せてくれると確信している。
アソシエーションについては、考えないでおく。彼らが、いかにも偽善者ぶって、福島について語るのって嫌気がするの。福島の子供達を傷つけないように、東北の子と言いましょう、なんて言うのよ。福島出身であることを誇りに思っているに違いないわよ。私のように。
会社は、遅かれ早かれ、いつかは終わりが来る。
買収会社については、考えないでおく。
バッタの父親は自分の人生に欠けているものがあるかなんて決して理解しないわ。
音楽を知らない人生なんて。

そうして、明日にも、息子バッタにはフィオッコを弾いてもらい、
末娘バッタにはバッハを、長女バッタにはヴィヴァルディを弾いてもらうことにする。

マリア ジョアン ピレシュ?
聴いたことないわ。
貴方の密かな憧れの人?
検索してみるね。

ありがとう。
なんだか、スパイラルから脱せそう。




返事を送ると、すぐに、マリアジョアン ピレシュのシューベルトのCDを購入手続きする。

それでも、何故か涙が溢れてきて、
嗚咽まであげ、止まらなくなる。

早くマリアジョアンに触れたかった。
彼女の音の世界に包まれたかった。
いや、
マリアジョアンを通して、、、、、、




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