雨が降るたびに秋に近づいていくように、
今年の9月はいつになく雨が降る。
ゆるやかな晴れ間を感じて外に出ると、
北の空に濃厚な雲が立ち込めていることが多く、
鮮やかな驟雨に見舞われるか、
氷雨に打たれるか、
粉糠雨に髪を濡らすことになる。
雨は決して嫌いではない。
ラベンダーの香りが立ち込めて、忘れかけていた夏の日を思い出させてくれるし、
湿り気を含んだ土は、しっとりと足を迎えてくれる。
松や杉の葉は、これまで以上にツンとし、
気まぐれな夏の暑さで幾つも実をつけたオリーブは、
濃厚な緑の粒が大きくなれずに戸惑っている。
車でしか通らない、良く知った道を歩くのも悪くない。
いつも通っていた時間でなければ、余計良い。
小糠雨に髪を濡らせ、
ポケットに手を突っ込み、
リズミカルに足早に歩く。
一歩、一歩、踏み出すたびに、
ぐちゃぐちゃな頭の中が、ストン、ストン、と整理されていくようで、小気味よい。
それでも、物思いに耽っていると、
ふと、前方に木を見上げながら立っている人影に気が付く。
良く知った顔であることが分かると、
ちょっと大きな声で挨拶をする。
「木の上をご覧になっていらっしゃるけど、何か見えるのですか。
それとも、誰かをお待ちになっていらっしゃる?」
にやり、と、「あなたを待っていたのですよ。」と返ってくる。
あまりに驚いた顔をしたからか、破顔し、そこがバス停であることを教えてくれる。
バス停、ね。
一緒にバスを待てば、何かが起こるかもしれない。
けれど、小糠雨は止んでいて、
頭の中にはまだ納まるところに納まっていないモヤモヤが残っている。
木の上を眩しそうに眺めて、
もう一度挨拶を交わし、歩みを続ける。
背筋を伸ばし、足早に。
一歩、一歩、踏み出すたびに、
ぐちゃぐちゃな頭の中を、ストン、ストン、と整理しながら。

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