2013年9月1日日曜日

それぞれの夏




人は見えない力に導かれているのだろうか。
或いは、何かの事実を摩訶不思議な現象に捉え、
如何にも、その不思議が我が身に降りかかったように思うものなのだろうか。

臺灣に住む双子の妹が三人の小さなバイオリニストたちを連れて夏に遊びにやってきて、
一緒に我が家の三匹のバッタ達とともに、イギリスに一週間の音楽のサマースクールに行くことは、ここ4年ばかり、我が家の恒例行事となっている。

最初こそ、その日の様々なレッスンやイベントに参加するこに夢中であったが、一昨年からは、ちょっとした用で、薬局やスーパーに広大なるキャンパスから外に出ることもあり、音楽のシャワーの素晴らしさとは別に、ひと時の安らぎや楽しさも味わってきている。

今年は、キャンパスのそう遠くない場所に、世界遺産のストーンヘンジがあることに気が付き、では、水曜の午後の時間にでも、ちょいと子供たちを連れて行ってみようか、と思うに至る。

ところが、残念ながら我が愛車には、運転手の私を含めて5人しか乗せることしかできない。妹は遠慮してか、頭痛がするのでキャンパスに残ると言う。そうなると、彼女の一番チビのお茶目姫と真ん中の未だママとの時間が大切な甥っ子は、キャンパス居残り組になろう。長女バッタは、今年はティーンエイジハウスやらにお世話になっているので、顔を見せることも一日にあるかないか。日本から来ている母は真っ先に小旅行参加に手を挙げている。あとは、妹のところの、急にレディになった長女と、息子バッタに末娘バッタ。オーケー。人数もぴったり。

が、意に反してに、息子バッタは居残り組になることを告げる。どうやら、妹に気になるオーケストラのパートを見てもらいたいらしい。いや、長旅には飽きて、プールに行きたいのかもしれない。あの、ストーンヘンジだよ。と言っても、フランスにもカルナックがある、と言い、乗り気にならない。まあ、へそ曲がりに付き合っている時間はない、とばかりに、一行車で出発。

Salisburyに行けば、何らかの看板が出てくるであろうと踏んでいた。そこまでの道は驚くほどの細道で、ところどころに木のアーチができている中をくぐる。対向一車線ながら、スピードは時速制限110キロ。さすがに、道を知らない田舎者が出せるスピードではない。

ほどなくしてSalisburyに到着。ここも13世紀頃から栄えた中世の町らしく、見事な大聖堂や町並みが目を楽しませてくれる。が、どこに行けども、ストーンヘンジに関する情報は得られない。取りあえずは、どこかで駐車しなくては、と思っても、タクシー専用であったり、なんだかややこしい。駅まで行けば、と思うが、あんまりぱっとしない駅で、気が付くと歩行者天国らしき道に入り込んでしまう。私の悪い癖で、前の車の後を付いて来てしまった結果。と、停車した前の車が合図をしている。窓を開けると、花屋のマダム。突き当りは駐車場だから、行きなさいよ、との合図だった。せっかくなので、ストーンヘンジへの道を尋ねてみる。

「あら、日を改めなさいな。今、私、その道から帰って来たのだけど、そりゃあ大変だったわ。交通事故よ。事故。それで、ひどい渋滞なの。」

地元ならではのホットな情報に感謝するも、かなり残念な思いが募る。この9月に中学に進学する姪が、来年は勉強が大変で夏にはイギリスに来れないかもしれないから、これが最後のチャンス。ぜひストーンヘンジが見たい、とつぶやいていたことを思い出す。

まあ、そんなこともあるよ。来年、きっと来れるよ、そう彼女を振り返って言葉を掛ける。

そして、教えられた駐車場が、実は大聖堂を訪れるにぴったりの位置であることが分かり、それはそれで大喜びし、皆で大聖堂の庭でピクニックをしようと、繰り出す。

13世紀建立された大聖堂は非常に重みあり、踏んでいる足元に書いてある文字を辿ると、なんと9歳で亡くなった方のお墓であったりと緊張感溢れる訪問となる。姪と末娘バッタは、それぞれにカメラを持って、お気に入りの写真を撮ろうと大騒ぎ。初めてカメラを買ってもらって嬉しかった自分と重なる。と、同じことを思っていたらしく、母もそんなことを言う。

マグナカルタをお見逃しなく、とパンフレットに記してあるので、皆でマグナカルタを拝みに行く。マグナカルタ、確か、大憲章。さて、如何なるものだったのか。記憶を辿ろうにも、曖昧模糊としている。

大聖堂の二階や塔の上まで見学が出来るようであったが、どうやらツアーでしか行かせてもらえず、時間も90分かかると言う。ちょっと残念な思いを残しながら、マグナカルタの記憶を頭で未だ探りつつ、それでも十分楽しめた大聖堂を後に芝生を歩く。

先程の花屋のマダムのお蔭で、渋滞に巻き込まれないで済んだけれど、、、。けれど、、、。ふと、そんな思いが過る。距離的にもそう遠くない筈。これから飛ばして、ちろりと目の端に収めるだけでも、ひょっとしたら、それなりの思い出になるかもしれない、と思う。

先ずは駐車場のおじさんに場所の確認をしようと思い、声を掛ける。にこやかに答えてくれるが、地図をみないと正確なことは言えない、と言われる。そして、「なにせ、ドイツから来ているドライバーなんだよ。あそこの、駐車場の管理人なら良く知っているだろうから、彼に聞いてみな。」とにっと笑顔を向けられる。

なんと。駐車場の管理人と思って声を掛けてしまったことを詫び、慌てて本当の管理人に尋ねに走る。今度は、もっと丁寧に、しかし、かなり地元情報満載にて教えてくれる。大聖堂の脇道を抜けて駅の方面に行き、橋を潜る感じで手前のランナバウトの二つ目を左折しA360に入る。そうしたら、ストーンヘンジへの標識も出てくる、と。

往復30分として、キャンパスに帰る時間が夕食に間に合うかぎりぎり。さあ、どうする?

姪が真っ先に、やっぱり行ってみたい、と言う。

因みに、駐車場の管理人のおじさんは、交通事故の話は聞いていないとしていた。

よし、行こう。いや、先ずは、さっきの駅に戻れるかな。大聖堂をぐるりと回り、さっきの道をうまく辿ると、駅の標識が出てくる。いいぞ。そう、このランナバウト。A360!間違いない。

それでも、怪しみながら走行する。イギリスの通りには、国道何号などといった標識が一切ない。日本は海外からの観光客に不親切だと言われるけれど、世界遺産のストーンヘンジへの標識がないなんて、なんて国なのかしら、と母は助手席でつぶやいている。

暫くして、ようやくストーンヘンジの遺跡のマークが印された標識が現れる。

花屋のマダムの情報はガセネタだったのか、或いは、我々が大聖堂を観光中に既に事故処理が終わり、走行がスムーズになったのか、何ら障害なく車を飛ばすことが出来る。

ストーンヘンジとの出会いよりも、その出会いを姪っ子に体験させてあげられることへの嬉しさの方が勝っていることに、なんだか笑ってしまう。ストーンヘンジでも、にわかカメラマンとなった姪っ子と末娘バッタが色んなポーズをとって写真を撮ってはキャーキャーしている。こういう場所は、博物館と一緒で、静かに鑑賞するものなのだと告げても、年頃なのだろうか、ころころと笑い転げ楽しそう。

そんなちょっとした体験をした今年のイギリスのサマースクール。車で戻ってくると、ヒースローから臺灣に帰った妹からメールが入っている。

ストーンヘンジの魔法か、中学受験した学校から入学案内が届いたとのこと。
勿論、実力だろう。いやあ、良かったね、おめでとう!

確か、大変な進学校だから、夏休みも返上で授業があるんだっけ。となると、来年のサマースクールは本当に参加が難しくなっちゃうのかな。

無理してでもストーンヘンジを見せてあげることができて、良かったな、と思う反面、ちょっぴりと寂しい思いも。子供たちは、こうして大きくなって、いずれ羽ばたいていくのか。

その時期がちょいと早まっただけ。

いやいや、妹のことだから、来年も私の車のトランクに入り切れない程の大きさのスーツケースを2つ持って、3人の子供たちに大きなリュックとバイオリンを背負わせ、遊びにくるんじゃないかな。

それぞれの夏がそろそろ終わりを告げる、未来に向けて。。。



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