祖国を離れて何年になるのだろう。長女バッタが今年の11月には二十歳になるのだから、既にこちらでの生活の方が長くなっている。それなのに、時々文化の違いに愕然とすることがある。
二年ほど前、丁度末娘バッタが中学三年になった時だろうか。夕方のバイオリンのレッスンの帰りで、車の中には息子バッタも一緒だった。確か、彼女のクラスの友達が家でクラス全員を呼んでのパーティーを催す予定だったが、実は両親ともに、その日は不在の予定で、当然親も知らされていない内緒のパーティーとなる筈だった。ところが、ひょんなことで母親の知るところとなり、慌てて母親がクラスの親全員にパーティーキャンセルの連絡をするという事件があった。
バッタ達が通う学校は14ヶ国の生徒が集う国際色豊かな環境にある。当然、皆自国のカルチャーを濃く引きずりつつも、フランス人として学んでいる。それでも、ラテン系の生徒達は幼いころから飲酒に全く抵抗がない。煙草も然り。ドラッグに全く抵抗のない生徒達もいる。従い、どうやら高校生にもなれば、ちょっとしたドラッグもパーティーには余興として付き物らしいことは、先輩ママ達から聞かされていた。高校生のパーティーにはアルコール、ドラッグ、そしてセックスは当然ある、と。非常に開放的で寛大な香港人の親友などでさえ、高校生の娘のパーティーでウォッカを数本取り上げたという話を聞いていた。
ママは皆のことを信頼しているけど、最近の皆のパーティーにはアルコール、ドラッグ、そしてセックスが付きものらしいじゃない。
そう言った途端、当時中学3年の末娘バッタから攻撃を受けた。
「ママ。タバコやドラッグがいけないのは分かるよ。やめられなくなるし、何といっても健康に悪いよね。でも、なんでセックスが同じように扱われるの?セックスって、身体に悪いわけじゃないでしょう?ママ、変なの。」
思わず、急ブレーキを踏みそうになる。
なんだって?
「避妊しなきゃいけないってことは十分知っているよ。学校でもコンドームは配るしね。」
ママは口がきけない。ちょっと待ってよ。
それで、息子バッタはどう思うのよ。
当時高校2年の彼は世界の全ての苦悩を背負っているような様子だったが、日本って、本当におかしいよね、と語り始める。こちらの夏休みが6月から始まることから、日本の学校に体験入学をしていたバッタ達だったが、夏休みを前にした生活指導の時間を振り返り、変な指導内容だったと言う。制服の着用、名札をつけるなど、細かい指導があり、加えて異性不純行為は駄目。一体それが何を意味するか細かい説明はなし。どうやら内容は20年前と大して変わていない様子に笑いが漏れる。
大騒ぎをし動揺しているママを見て、末娘バッタの方がショックらしく、ママ、やっぱり変だよ、と。別に、だから、誰彼構わずセックスするわけじゃないけど、セックスって、悪いことじゃないでしょう?
ああ、我が子よ。そうだねぇ。。。
あれから2年。末娘バッタにはどうやらボーイフレンドが出来たらしい。
彼の誕生日に呼ばれたとかで、昨日は夜遅くまでチョコレートケーキを作っていた。しかも、沢山のレシピを比較検討しながら。それから、短冊を作り、何やら一首を書き認めていた。彼が日本語が読めるわけではないだろうが、へええと、どんな歌を書いているのが覗いてみる。
世紀のプレイボーイ、在原業平の一首。ところが恋心を謳ったものでもなく、ママとしては、かなりびっくり。色彩感覚あふれ、秋にぴったりの一首。
なんだか、拍子抜け。しかし、わざわざ日本の平安時代の歌を彼に書いてあげるなんて!どうやって説明するんだろうか。何だか、ほのぼのとしてくる。しかし、それこそ、彼にとってカルチャーショックではないだろうか。
ちょっと、いや、大いに嬉しくなる。
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