2021年4月8日木曜日

香辛料の魔術

 






深く考えもせずに外に出て、BIOの店に向かった。香辛料の棚が充実していたのは、一体どこだったろうか。隣町の八百屋かもしれないとの思いが過るが、もう既に歩き始めてしまっていた。


コリアンダーの粒はこの間買ったばかりだった。クミンも未だ十分ある。気がかりはカルダモンの実と黒のマスタードシード。それから、できたら新鮮な青唐辛子も手に入れたかった。


歩きながら、先日送られてきたメッセージを思い出す。


「Hi 」


それ以上でもそれ以下でもない。

送られてきた時に、すぐに返事を書かなかったからだろうか。翌日、桜の花の写真と一緒にメッセージを送るが、それへの反応はなかった。


らしいと言えば、彼らしい。しかし、このコロナ禍で、随分と影響を受けているのではないだろうか。元気にしているのだろうか。そういえば、一度日本でコロナ陽性者数が少ないのは、偏にスチームで喉を消毒しているからだとのスチーム器のPRビデオを送ってきた時があった。あの時は呆れて無視を決め込んでしまったが、そんなでっち上げの嘘を信じて、馬鹿な買い物をしないでね、とでも言ってあげれば良かっただろうか。


今なら遊びに行けば、時間の余裕があって会えるのだろうか。それこそ、日本に絶対行くと言っていたのは、どうなったのか。いずれにしても、このコロナのお陰で、身動きのとれない状況ではあることに思い至る。まったく、ため息ばかりが出てしまうではないか。


そうか。彼からのメッセージが発端で、深層心理が働いたのかどうか本当のところは分からないが、どうしても急にかの地のカレーを作りたくなってしまっていた。ひょっとしたら、植木鉢からマンゴの芽が漸く出てきたからかもしれない。


先ずはベースのカレー粉作りから。そのためにはコリアンダー、クミン、黒コショウ、コメ、黒マスタードシード、クローブ、カルダモンシード、フェンネルシードが必要だった。


他にも、カイエンヌチリーパウダー、シナモン、ターメリック、ココナツミルク、ココナツ。


ベースのカレー粉の材料を炒め始めると、香ばしいにおいがキッチンを満たした。焦がすちょっと手前で火から下ろし、冷ましたら、ブレンダーで粉砕する。何回かに分ければ良かったのだろうか。ぱんぱんに入れたブレンダーから真っ白な粉が出てきてしまった。しかし、得も言われぬほのかな甘い香りが立ち込める。


短冊切りの玉ねぎ1個をオリーブオイルで炒め、薄切りにしたニンニク6個を入れる。青唐辛子はなかったので、今回はパス。そこに先ほどのローストしたカレーベースを大匙2杯、予め粉にしたマスタードシードを大匙1杯半。今回は黒がなかったので、黄色で代用。カイエンヌチリーパウダー小匙2杯、シナモン小匙1杯半、ターメリック小匙1杯。しんなりと玉ねぎと絡み合うまで炒める。


予め大きめのさいの目に切っておいたカボチャを入れ、混ぜ、ココナツミルクを2カップ入れる。塩、胡椒で味つけ。鍋の蓋をせずに、のんびりとカボチャに火が通るまで炒める。


ココナツ大匙4杯を別に炒めておき、出来上がる直前に入れる。


カボチャの実はとろりととけ、カボチャの皮はしっかりしていることが美味しさの秘訣か。青唐辛子が入っていないからか、急激な舌にくる辛さはないが、奥行きのある、豊かな味わいとじんわりとくる辛さに思わず唸ってしまう。


果たして、本場のカレーの味に近づけたのだろうか。一体、彼との距離はいつかは縮まるのだろうか。


マンゴの芽が答えを知ってか知らずにか、すくっと立ち上がり、威風堂々たる姿が見事に様になっている。春爛漫。



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