2021年9月20日月曜日

ナメクジ談話

 




漸く無事にビザが下り、先に単身で日本に乗り込み仕事を開始している旦那のもとに行く算段が立った友人が数日我が家で過ごしている。


手料理で歓待していて、自慢のレパートリーの中から毎回楽しく吟味厳選し、簡単な、それでも見栄えの良いご馳走を作って楽しんでもらっている。息子バッタもそろそろ大学の寮に戻るので、彼女が日本にもうすぐ行くとは言え、ちらし寿司なんかも作ってしまう。


いつもの手順と違ってしまうのは、彼女の存在。おしゃべりしながらの準備になるので、気が付いたらスタートが遅くなり、日の入りが早くなってきた分、外は薄暗くなってしまっている。もちろん、そんな時間の過ごし方を大いに楽しんでいるが、手順が違う分しわ寄せがくる部分もある。


できるだけ直接太陽の陽を浴びせたいと、マンゴ、杏、アボカドの植木鉢は朝から外に出していて、夕方に取り込むことにしている。そして、なんとか土に植えたサツマイモの苗に関しては、紙袋を被せる。やわらかい葉をぺろりと食べてしまう、ずうずうしいナメクジ対策。フランス語では「limace」リマス。そのタイミングが遅くなってしまうと言うこと。


しまったとばかりに外に出ようとする私に友人が訝し気な様子をするので、リマス/ナメクジによるこれまでの被害について話し、編み出した対策について語る。そして、慌てて外に出る。


暗くなってから植木鉢を取り込む作業は問題ないが、サツマイモの苗に紙袋を被せる作業は難航する。目を凝らしながら紙袋を被せ、脇に置いておいた小石を二つ飛ばないように紙袋の端に置くのだが、小石が見つからない。暗いので危うくリマス/ナメクジを触ってしまう危険も孕んでいる。


大騒ぎをしながら4つのサツマイモの苗に紙袋を被せて食卓に戻ってくると、友人がにやにやしながら待っていた。どうやらリマス/ナメクジについてネット検索し学んだらしい。


リマス/ナメクジを退治するには、ビールが最適らしいので早速ペットボトルにビールを入れて試そうと言う。いやいや、待って欲しい。何百ものリマス/ナメクジがペットボトルに入っているブツを翌朝回収するのは勘弁したい。この庭にお住いのリマス/ナメクジの数を知らない彼女の妄言。


それよりも、にんまり笑って彼女は続ける。リマス/ナメクジのリエットが美味しいらしいわよ。


出た、出た、出た。何せ彼女は、椅子以外の4つ脚は食すると自分でも豪語する中国大陸のご出身。嗚呼、まさかリマス/ナメクジ食の話になるなんて。


それからは、リマス/ナメクジのカルパッチョがいい、とか、リマス/ナメクジの佃煮、リマス/ナメクジの燻製とすごい言葉で飛び出てくる。将来的な食糧難を前に、昆虫食は静かなブームだが、今後リマス/ナメクジ食が大いに盛り上がる可能性を秘めているとのこと。一儲けできると目を輝かせてさえいる。


なんと息子バッタが私をからかうために話に乗ってきた。


考えてもみてよ。牡蠣だって最初はこんなの食べられるもんか、との葛藤の末、味見をしてみた強者がこれはイケるってなり、今ではノエルには欠かせない食材になったじゃない。ママが大好きな栄螺だって、最初はきっとすぐには手がでなかったはずだよ。


ちょいちょい、リマス/ナメクジと牡蠣や栄螺様を一緒にしちゃいかん。


まったくもってぞわぞわしてしまう。


長女バッタも乗ってきて、粘液が実は肌に良くて、化粧品としての価値があるかもしれない、なんて言うので卒倒しかけてしまう。


皆の想像は逞しく、思わずリマス/ナメクジ談話が盛り上がってしまう。庭のリマス/ナメクジたちはどんな思いで、その話を聞いているやら。


清貧で結構。リマス/ナメクジ殿のお世話にはなりたくはない。そう思いながらも、餓死の危機に瀕したら手を出さずにはいられまいか、との思いも過る。この話はここまででお預け。今のところはサツマイモの苗に望みを託そう。


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