2021年8月2日月曜日

珈琲談話

 




珈琲豆を購入する時は、豆の銘柄や品種、精製方法や焙煎の度合いよりも何よりも、生産国に一番関心がいく。


だからと言って、当地で飲まれている珈琲の味を再現したいからではなく、その地の香りを楽しみたい、そして、少しでも経済活動に貢献したい、との気持ちが少しは働いている。


いやいや、そんな高尚な思い以上に、別の、深い思い入れがある。


ペルーのティティカカ湖の湖畔にあるホテルでの朝食。湖畔と言えど、船着き場があり、ガイドブックにも載っているプーノの町から車で小一時間もする辺鄙なところ。


そこのホテルの滞在客は我々を含め3組程度。湖を見渡せるガラス張りのレストランでの朝食は、珈琲の豊かな香りが漂っていて、期待度満点だった。


しかし、珈琲がステンレス製の胴長のディスペンサーに入っていることを知り、恐れ慄いた。それでも、リッチな珈琲の香りに頬は緩み、淡い期待を抱いて、カップに注いだ珈琲を口にする。と、色のついた熱いお湯。ああ、無残にも期待は打ち砕かれてしまう。


別のレストランで、濃く淹れた珈琲を熱湯で薄めている様子を目撃してから、ディスペンサーには抵抗があった。何故せっかくの味わい豊かな珈琲を熱湯で希釈してしまうのか。どこのレストランでも、珈琲は常に色のついた熱いお湯だった。


スタッフは皆慎み深く、陽気で、とても気さくだったので、珈琲の淹れ方を伝えようかと試みたが、何せ言葉が通じない。珈琲の粉とお湯を持ってきてくれれば、自分で淹れるのに、と思う程。


珈琲の生産地としても有名なのに、一体何故なのか。

今更ながら、ペルーでの珈琲の飲み方をネットで検索してみると、濃く淹れた珈琲を、自分の好きな濃度にお湯で薄めて飲む習慣らしいことが分かる。それなら、濃厚な珈琲が入った保温ポットと熱湯の保温ポットの二つを用意しておいてくれれば、と思う。その方が、ゲストに親切ではあるまいか。


従い、ペルーで飲んだ珈琲は、心揺さぶられるものでもなく、感動的でもなかったが、それでも、却って印象に強く残っているとも言えようか。


そうして、珈琲豆を買う時には、どうしてもペルー産に手が伸びてしまう。インカの末裔たちに敬意を払い、彼らの歴史に思いを馳せ、インカトレイルへの憧れを抱きながら。


もちろん、自己流で淹れるので、香り高く味わい深い珈琲が楽しめる。ペルーの彼らは、それを口にしたら、濃過ぎて吐き出すだろうか。それとも、目を細め、にっこりと微笑むだろうか。



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