トンカにとってのサンタおじさん、私にとっての困ったおじさん、つまり例のクロケットおじさんと出会う道に差し掛かったということだった。そして、トンカはサンタおじさんの気配を全身で感じ取っている。
ちょっと前なら、微笑ましい姿だった。森で鹿と出会う時にも、同じような姿勢を取ることがあったし、全身全霊を掛けて何かをするトンカを見ることは喜びでもある。しかし、その後のトンカの態度、何も見えなくなってしまう様子に辟易していたので、一瞬にして心にずしんと鉛の塊を感じてしまった。
トンカは動物で、餌の前では本能をむき出しにする。子供達が捨て散らかした食べかす、ハイカーたちが落としていったティッシュ、時に彼らの汚物、スカウトたちのキャンプ後の残飯など、見つけようものなら飛びついてしまう。そこからトンカを引き離すことは至難の業である。
最近、ようやく落ちているティッシュを食べなくなったが、それでも、特にそれに汚物が付いている時などは一瞬にして口に入れて飲み込んでしまう。それがトンカの本性なのだと言われれば、返す言葉は一言もないが、それでも餓鬼のように貪る姿を見ることは辛い。
トンカは以前勝手にすっ飛んで、車道を私を探してかっ跳んでいる時に確保してくれた夫婦が大好きで、見掛けると大喜びで挨拶に行く。そんな姿を見ることは嬉しいし、彼らに甘える姿は微笑ましく、こちらも気付くとにんまりとしてしまう。
しかしながら、サンタおじさん、困ったおじさん、所謂クロケットおじさんの場合は、全く違うのである。なぜなら、おじさんはエンドレスでクロケットを与え続けるような態度をとるので、トンカはいつまでたってもおじさんの傍を離れない。私が呼んでも、隣で駆け出しても、何をしても効果がない。つまり、私の姿が見えなくなってしまうのである。
クロケットおじさんのポケットから全てのクロケットがなくなってしまったら、森でキャンプ後の残飯を見つけた時の様に、トンカは暫くすれば私のもとに慌てて全速力で戻ってくるのだろうか。そんな恐ろしい、トンカを試すようなことは出来ないし、していない。それでも、そんな不安を感じさせるこの出会いが、トンカの動物としての本能を見せつけられることへの苦々しさもあって、苦痛になってきていた。
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