ペルー紀行
第一話 インカの末裔
第二話 マチュピチュを目指して
第三話 真っ暗闇の車窓
第四話 静かな声の男
第五話 さあ、いざ行かん
第六話 空中の楼閣を天空から俯瞰
第七話 再び、静かな声の男登場
第八話 インポッシブルミッション
第九話 星降る夜
第十話 インカの帝都
第十一話 パチャママに感謝して
第十二話 標高3400mでのピスコサワー
第十三話 アンデスのシスティーナ礼拝堂
第十四話 クスコ教員ストライキ
動き出したバスはすぐに停まった。どうやら、クスコの南東、約120kmの場所ににあるラクチ遺跡に着いたらしい。ここにはインカ帝国時代のビラコチャ神殿が残る。
民衆の間で創造主として崇拝されていたビラコチャ神を奉る神殿は、調べたところインカ帝国に二つあったらしい。一つのクスコの神殿はスペイン人が破壊し、石組みの土台の上に今ではカテドラルが威風堂々と建っている。例のアンデス流の「最後の晩餐」が飾られている場所。もう一つはここ、ラクチにある。全長約92m、横幅25.5m、高さ20mの巨大建築物だった。
恥ずかしいことに、マチュピチュ以外は勉強不足。いや、マチュピチュだって母のリクエストに応じるためにネットで検索し、漸くマチュピチュ遺跡というものがマチュピチュ山とワイナピチュ山に挟まれていることが分かった次第であった。
聳え立つ巨大な壁の連なりを目の当たりにし、圧倒されてしまう。なんて知らないことがこの世に多いことか。この遺跡の存在さえ知らずに、昨年の夏フィリピンに遊びに行った、高校時代の友人の旅行記に触発されて、余り深く考えもせずに旅行会社にリクエストしていたバスの旅だった。
穀物貯蔵庫を有することで、インカ帝国時代は、行政の機能を持っていたらしいと考えられている。神殿の一部として今残る大きな壁は、外壁ではなく主柱であったと言われている。下部がインカ帝国の代表的な石組みになっていて、上部が日干し煉瓦を積み上げ、泥で固めて作られている。
スペインによる侵略は16世紀半ばのこと。ピサロ勢力は、何故に半端な格好で神殿を破壊したのか。恐らく、歴史書には詳しく解説がなされているのだろう。キリスト教を普及させるためには、邪魔であったであろう神殿。侵略者はモノや土地だけでなく、その地に住まう人の信仰までをも奪い取ろうとする。
しかし、ピサロにしても、その最期は哀れではある。スペイン本国から支持を失い、インカ帝国の最後の皇帝を処刑したかどで死刑を宣告され、最終的には、クスコの領有権を巡って対立し、暗殺したスペイン人の仲間の一派にリマで暗殺されてしまう。力を付け過ぎたことでスペイン国王を始めとするスペイン本国の権力界からは見放されたのだろうか。埋葬されなかったピサロの遺体は今でもミイラとして残されているという。それでも、ユーロ導入前のスペインのペセタ紙幣にはピサロの肖像が使用されていたという。例のアンデス流の「最後の晩餐」では、裏切り者のユダの顔がピサロ。今のペルーはスペイン侵略の時代なくしては成り立たないが、それでもピサロを慕うものは少ないに違いない。
遠くを見渡すと、遺跡全体を取り囲むように城壁が見えた。
遺跡入り口の広場で遊んでいる子供達。決して観光客に媚びることもなく、無邪気に遊んでいて、その姿に嬉しくなってしまう。
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