ペルー紀行
第一話 インカの末裔
第二話 マチュピチュを目指して
第三話 真っ暗闇の車窓
第四話 静かな声の男
第五話 さあ、いざ行かん
第六話 空中の楼閣を天空から俯瞰
第七話 再び、静かな声の男登場
第八話 インポッシブルミッション
第九話 星降る夜
第十話 インカの帝都
クスコでの最後の晩の食事はクイにすると決めていた。クイについては天竺ネズミなんて訳があるが、クイはクイ。カテドラルの奥の間に恭しく飾られている「最後の晩餐」のメインディッシュがクイの丸焼き。
実は、クイについては、ペルーに行く前に一度大恥をかいている。しかも、長女バッタの友人の前で。
大学の試験が終わっていないからとペルーへの家族旅行に参加しなかった長女バッタだったが、息子バッタの高校の卒業式にはロッテルダムから駆けつけてくれていた。その晩、彼女の友人も交えて、皆で夕食を共にしている時、「ペルーに行ったら、絶対食べなきゃいけないもの、それはクイよ!」とフランス語で大声で宣言。その後の沈黙がやけにおかしいな、と思ったのも束の間、待ったぁ!そんな意味ではないっ、と赤面。確かにフランス語で話をしているのだし、私の発音の仕方ではフランス語の「クイュ」に聞こえなくもない。つまり、非常に下品な言い方で、男性のボールを意味する言葉を吐き、ましてや、それを食したいとまで宣言したことになってしまったわけである。
この時は、郷に入っては郷に従え、ではないが、できるだけそこでしか味わえない体験をしたかったからこそ、クスコの名物料理としてのクイを食したいと思っての発言だった。
しかし、その思いは、ワイナピチュを一緒に登りながらクイの話をしてくれたケチュアの民、ユゴーやクスコのカテドラルにある「最後の晩餐」を解説してくれた、やはりケチュアの民、自称ミュージシャンンのガイドの男性との出会いで、また少し違うものになってきていた。
彼らは、厳かに、かつ丁寧に自分たちにとってのご馳走について語ってくれた。民族にとって、非常に馴染みあり、彼等の祖先たちの食卓を賑わせ、これからも、子孫の食卓を賑わせるであろう、一品。彼らにとっては、それを食することは当たり前のことであり、生活の一部なのである。ところが、場所変わって、その対象を飼育する人々も、この世の中にはいるのである。
その事実を知った時の彼らの衝撃は如何なるものだったか。
しかし、残忍だとして、自分たちの文化を蔑ろにすることなど決してなく、気高く、誇りをもって、自分たちの文化をそのまま受け止め、堂々としている。なんと清々しい態度ではないか。
だからこそ、彼等の母なる大地パチャママに感謝をし、厳かに彼らのご馳走なるクイを食すことで、彼等の文化に対する敬意を示したいと願ったのである。
葡萄の蒸留酒、ピスコを片手に。
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