2023年8月15日火曜日

君の虜

 





トンカに出会うまでは、動物が笑った写真を見ても、新生児が笑った写真の様に思っていた。いわゆる天使の笑顔であり、筋肉の動きがなせる業なのだが、ママやパパは我が子が、おじいちゃんやおばあちゃんは我が孫が微笑んだと、大はしゃぎするのである。


でも、トンカとの生活を始めてから、自分の考えがなんと浅はかであったのかと、トンカの様子をつぶさに見ることで、驚き、そして大いに反省したのであった。


トンカは溜息をつく。こんなに晴れているのに、外に遊びに行かないなんて、と、ソファーに寄りかかり、鼻をガラスにくっつける様に窓の外を見ながら、ふーっと鼻から音を出す。


朝の散歩に行こうとドアを開けた時、空から銀の粒がしきりに降っていて地面を濡らしている様子を見て、ドアぎりぎりのところで踏みとどまり、外に出ようとしない。先に出て、「トンカ、来い」と声を掛けても、この雨の中を?と言わんばかりに、空を恨めしそうに見上げて動こうとしない。


バッタ達が週末に帰って来ると、大いにはしゃいで、ソファーにくっついて寝そべり、満足そうな顔をする。長女バッタや末娘バッタが、ヨガをするともなれば、一緒に自分もヨガのポーズを取ろうとする。


PCを前に仕事を開始すると、一挙手一投足を見逃すまいと視覚、嗅覚、聴覚を総動員し見張っており、ふっと携帯でも見ようものなら、休憩なのかとばかりに音もなく駆け寄り、鼻を膝に押し付けてくる。


大好物のさくらんぼやミラベルを好きなだけ食べた後は、恐らく藤原道長公が「この世をば」と詠んだであろう時の、これ以上にない満悦の様子でごろりと横になる。


散歩のときに、友達と追いかけっこをしたり、鹿に出会ったりと、森を好きなだけ駆け回った後は、帰ってくるとひんやりとしたフローリングで熱くなった身体を冷やしながら、目を閉じながら鼻歌でも歌うかのような表情をしている。


例を挙げたらきりがない。時々、熾火のように瞳の奥を煌めかせて、まんじりともせずに見つめられていることに気が付く。嗚呼、そんな瞳で見つめられたら、心臓がばくばくして、正に恋に落ちてしまうよ。


いや、既に、すっかり、君の虜、か。



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