2011年10月5日水曜日

マンゴ カルナンデ


我が家の庭には幾つもの様々な大きさの植木鉢があり、たっぷりとした深緑の葉を誇らしげに茂らすもの、つややかな緑の葉をかわいらしくつけているもの、一本の茎が突き出しているだけのもの、と一つ一つ個性的。それは、全て、我が家で食したマンゴの種を植えたもの。

マンゴは冷蔵庫で間違っても保存してはいけない。そんな種からは芽は出ない。

丁寧に大きな種の固い皮を剥き、中身を壊さないよう静かに取り出し、土の中に埋めてあげるだけ。そして、『マンゴカルナンデ』を子守唄のように歌ってあげればよい。

マンゴ カルナンデ
モカダ メーパッテ
ハンダ ヤーメバラ
ゲラリン パナガッテ
マンゴ マンゴ マンゴ~

土埃を立ててジープは恐らくその村の一本だけの大通りを走り、ゆっくりと明かりの中で止まる。どうやら、二本だけ煙草を買い求めたらしい。

20年以上も前の思い出。私が未だ大学生であった頃のこと。運転手は例の初恋の相手(http://kookaburra-coo.blogspot.com/2011/09/blog-post_18.html)。彼の国に数日ほどツアー旅行で訪れた時のこと。

ツアー旅行といっても、参加者は確か5人のみ。一人で行ける国でもなかったし、一人で彼に会いに行くような二人の関係でもなかった。それでも、出発前に旅程を知らせた航空便を出し、電報まで打っていた。実際に彼に会えるかどうかなど、分からない旅。

もしも彼に会えなくとも、彼の国を訪れるだけで良い、そこまで思っての旅。何と言っても彼からの便りときたら、一年に2回あれば御の字。軍隊に入ってからは、ほぼなしの礫。しかも、住所ときたら、村の名前だけ。これだけで一体届くのか。番地どころか、通りの名前もない。それでも、電報を打っていた。

入国手続きを済ませ、ドアが開くと、彼がいた。

そう、彼が文字通り、ドアの前で待っていた。でん、と踏ん張って。

あんまり驚いて、ずっと思いつめていたからか、涙が頬を伝っていた。

彼は軍の制服を着ており、高校の時に出会った彼と全然変わらないようで、それでも、やっぱり全然違っているようでもあった。だけど、ずっとずっと思いつめていた憧れの相手。心の中で何度も話をし、何度もすれ違った過去を訂正しようともがいた相手。事実は事実で変えようもないことに嘆き、苦しんだ。その相手が目の前に立っていた。

気がつくと、隣に静かに微笑みながら好青年が立っている。郷里の幼馴染を連れてきたという。

ツアーの旅程で、彼の郷里の村に行く時には、ホテルに会いに来てくれる、とだけ告げ、戻らなければ、と二人は去っていってしまった。

久しぶりの再会に興奮しており、実は、空港に会いに来てくれただけで、胸が高鳴っていた。

そうして、彼の郷里の村のホテルにバスが着くと、ホテルの前で仁王立ちして、やはり幼馴染を連れて待っていてくれた。夕方のツアーの行事には参加せず、彼のジープに乗って、彼の家にお茶をご馳走に連れて行ってもらう。

その帰り、夕食に間に合うようにとジープを走らせていた彼が、ふと車を止め、煙草を求める。幼馴染に一本渡し、一本を自分がくわえる。そうして、おもむろに私を振り向き、ニッコリと笑う。

煙草を吸うなって、言うだろうね。
16歳の時も、君はそう言ったね。
幸せな時だけ吸うことにしているんだよ。

そう言って、火をつける。

私たちは、特に何をしゃべるでもなかった。幼馴染の彼がいたこともあるけど、そんなことより、余りにも考えることがあり過ぎて、それでいて、何も考えることができずに、胸だけが詰まって、言葉にならなかった。

スッキヤネン

突然、そんなことを言う。関西出身の留学仲間の顔が浮かぶ。あいつが教えたに違いない日本語。まだ覚えてくれていたのか。

でも、と若い当時の私は焦る。関西弁で、しかも、変なアクセントまでついているそんな言葉は、私の心には届かないよ。

そう、何か、歌を教えてよ。

今度は突然、私が声を出す。

え?歌?歌なんて上手に歌えないよ。

オーストラリアで、皆で歌ったり、踊ったりしてたじゃない。

昔を懐かしむ優しい目になり、そうして、歌いだす。

マンゴ カルナンデ
モカダ メーパッテ
ハンダ ヤーメバラ
ゲラリン パナガッテ
マンゴ マンゴ マンゴ~

マンゴの芽は植えてから一月もかかって漸く芽を出す。
フランスの太陽の光が弱いのか。

だから、マンゴに、南洋の暑い太陽を思い出させ、元気良く成長するように歌ってあげる。

マンゴ カルナンデ
モカダ メーパッテ
ハンダ ヤーメバラ
ゲラリン パナガッテ
マンゴ マンゴ マンゴ~


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皆様のコメント心より待っています。

6 件のコメント:

Le Sirius さんのコメント...

初めまして・・・と言うべきか。コメントを送るタイミングをこれまで逃してきましたが、今回は是非とも送りましょう。

以前の初恋の相手のお話が一番好きでしたが、今回のお話がさらに好きです。いろいろと多くのことを知っているようでいて、実はその人にとって大切なことを人と人は知り合うことなく、それで普段の交友を続けていくものなのでしょう。前回のお話を読んで僕には昔むかし、それはもう20年も前になるであろうあの頃に貴女がしきりに口にしていたあの国のことをとっさに思い出し、そうだったのか、そうだったんだ・・・と大切なことを発見しました。この広い地球の200もある国の中からなぜあの国だけを取り上げるのか、あのときの僕には貴女が酔狂な女に思えていたのです。

そんな初恋の彼の思い出と、貴女の行動力が紡ぎだしたその後の甘酸っぱい思い出。兵服から、タバコの煙から、そしてマンゴーの芽から、貴女の思いが僕にも伝わってくるようです。

kookaburra さんのコメント...

Siriusさん

コメントありがとうございます。
語りだしたら止まらない、彼との思い出です。当時、アジアの星になるのね、と友人に言われていたのに、私も星とまではいかずとも、アジア人としてアジア地域への貢献をする自分を考えていたのに、何故か、欧州でアジア人をしています。人生って不思議ですね。出会いって神秘ですよね。でも、こうして、Siriusさんとの出会いもある。。。
どうぞまたコメントを!楽しみにしています。

あかうな さんのコメント...

思わず引き込まれてしまいました。クッカバラさんと一緒に私も旅したような気がします。ところでマンゴ~。って歌は本当にマンゴの歌ですか?

kookaburra さんのコメント...

あかうなさん

楽しくなっちゃうコメントありがとうございます。そうですね。あの時に戻って、ご一緒したいです。。。

マンゴの歌ですか?マンゴの歌なんですよ。でも、主題はマンゴの木がある庭に住んでいる女性。。。と教えてもらいました。

なかなか良い曲です。機会があったら、ぜひ。

あかうな さんのコメント...

くっかばらさんのブログ、歌が流れるようになるといいですね。
まんご~。

kookaburra さんのコメント...

あかうなさん

ゆーちゅーぶ で調べるとヒットします。リンクを入れようかと思ってやめました。私のイメージとちょっと違うのです。あかうなさんも、ぜひ、マンゴ、種から育ててみてください。可愛いですよ。