気を取り直し、そろそろ夕日が沈む頃だろうからと、相棒と二人で外に出てみた。どうやら高台があるようで、そこまで歩いて行ってみた。雲が山並みを隠しながらも、時々、峻険な雪肌がちらりと見えるものだから、そのあまりの壮大さに声が出なかった。
我々二人だけだと思っていたが、誰かが高台に上って来たようで、「ナマステ」と声を掛けられた。景観に目を奪われていて、その人物に特に注意を払わなかったのだが、こちらに手を挙げて去って行く後ろ姿を見て、Rajさんだと分かった。
きっと部屋から我々の姿を見て、気になって外に出てきてくれたのだろう。そうして、我々の様子を見て、そっとしておいてくれたのだろう。
そう、相棒は私に抱きついて、正に360度見渡せる絶景を前に、感動で泣き声になっていた。ヒマラヤに誘ってくれて、ありがとう。何度も相棒は呟いた。うん、うん。一緒に来れて良かったよね。私も嬉しかったし、この景観を前に心は高ぶっていた。
と、相棒が続けた。「ね、覚えているでしょう?ほら、あそこの小径。ねえ、私たち、以前ここで一緒に住んでいたよね。」
えっ?お、おーい。うーむ。「ごめん。その世界には、私は入りきれんよ。」そう言ってしまった。恐らく、相棒はがっかりしたと思う。ごめんよ。でも、がっかりしながらも、するりと受け入れてくれたとも思う。なぜなら、生まれた時から、いやAmmaのお腹に入った時から二人は一緒だったのだから。お互いに、お互いのことを何の抵抗もなく、ありがままに受け入れることが出来る、唯一無二の存在であると、お互いに自負しているのではなかろうか。
いずれにせよ、この壮大なる景観が我々二人にもたらした感動に変わりはなかった。
ヒマラヤ山脈では、これほどにも雄大で、静寂の中にも、刻一刻と姿を変え、力強くも厳粛に、夜の帳は下りるものなのか。

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